こころと会話

医療スタッフとの
向き合いかた

医療従事者と関わるときの
ヒントをご紹介

担当医とどう関係を築けばいいの?

自分の症状をしっかり伝えることから始めてみて。

回答:清水 千佳子先生

担当医と関係を築くための第一歩は、自分の症状をしっかりと伝えること。「いつから」「どんな症状が」「1日何回くらい」を伝えるとともに、つらい症状があるときは遠慮せずに話してみてください。つらい症状の有無は、医師にとってぜひとも把握したい重要な点ですから。

とはいえ、診察の時間は限られています。「経過を紙にまとめておく」「聞きたいことはあらかじめメモしておく」「担当医の質問にはきちんと返答する」など、短い時間を有意義に過ごせるよう意識するといいですね。緊張したり、うまく会話する自信がない方は、家族や身近な人に診察についてきてもらうことをおすすめします。

担当医や周りを巻き込んで、信頼関係をつくりましょう。

回答:熊谷 靖代さん

診断直後は、冷静なつもりでいても内心ショックを受けていて、担当医の話がほとんど頭に入ってこないことがあるようです。そうすると、会話に食い違いが生じやすいですよね。もし応援が必要と感じたら、看護師、医療ソーシャルワーカー、受付のスタッフ、病院のがん相談支援センター(がん相談支援室)の相談員といった他の医療スタッフに声をかけてください。

心がけたいのは、担当医であれ、誰であれ、信頼をベースにして人間関係を少しずつ築いていくこと。サポートが欲しいときは積極的にSOSを出して、周りを巻き込んでいくこと。そんなことの積み重ねで、心地よい環境がつくられていくのではないでしょうか。

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担当医に対して距離を感じてしまう

話題を絞って話すなど、コミュニケーションが取れる距離を探してみましょう。

回答:熊谷 靖代さん

いつも忙しそうで話しかけづらい、会話のキャッチボールができないなど、すれちがいの積み重ねで、心の距離が生まれているのかもしれませんね。

そんなときは、「担当医とぜひ話したい話題」と「他の医療スタッフでも構わない話題」に整理して、話題を絞って話すことから始めてはいかがでしょうか。

そうした工夫を重ねても「どうしても合わない」と感じるようなら、主治医の変更は患者さんにとってデメリットがあることは承知のうえで、変更を視野に入れる必要があるかもしれません。でもその前に、今の担当医とより心地よい関係を持てるよう、工夫することをおすすめします。完全に自分に合う医師と出会うことは難しいですからね。

担当医からの病気の説明がよくわからない…

話の要点を紙に書いてもらうよう、お願いしてみましょう。

回答:熊谷 靖代さん

説明が理解できないのに、「よくわからない」と言えないことがありますよね。でも、わからないことをそのままにすると、今後の治療に支障が出てしまいます。説明の内容を紙に書いてもらってはいかがでしょうか。

以前、「息子に見せたいので、話の要点を紙に書いてください」と担当医にお願いしたり、「先生のメモを息子に見せたいから」と看護師をつかまえたりして、補足説明を書いてもらっている患者さんがいらっしゃいました。

もし自信がないときは、身近な人に診察についてきてもらってもいいですね。やむをえずひとりで行かなければならないときは、診察後、「混乱していて話を理解できなかった」と、周囲の医療スタッフにひと声かけるという方法もあります。あなたのそのひと言が電子カルテに記録され、次回の診察に役立つかもしれません。

担当医が提示した治療方針が最善なの?

その治療をすすめる理由を、担当医に聞いてみましょう。

回答:清水 千佳子先生

担当医が示した治療以外に、もっとよい方法があるかもしれない…。多くの方が抱く気持ちだと思います。どうしても完璧な治療、最新の治療を求めたくなりますが、新しい治療法が必ずしも最善とは限りません。絶対的な治療は存在しませんし、あなたの体の状況から、担当医があなたにとって最善と考えた治療を提案しているはずです。

その方針に疑問を感じたら、ほかに選択肢があるかどうかを担当医に尋ねてみてはいかがでしょう。そして、なぜこの治療を最善だと考えるのか、理由も確かめてみるといいですね。

選択肢が複数ある状況であれば、自分の考えを整理するために、看護師など医療スタッフの力を借りてもよいかもしれません。客観的な見方で情報を検討すれば、担当医がなぜその治療をあなたにすすめたのか、理解できるかもしれません。

担当医の提案内容とは異なる治療情報を耳にして、気持ちが揺らぐこともあるかもしれませんが、誰かに効いた薬があなたにも合うかどうかはわからないもの。まずは担当医と話し合うことから始めてみてください。

セカンドオピニオンはどういうときに検討するの?

異なる意見を提示されたら、持ち帰って担当医に確認しましょう。

回答:清水 千佳子先生

担当医に提示された治療方針を受けて、「もっとほかにもあるんじゃないか?」と感じるのは自然なことです。セカンドオピニオンは、そうした疑問を払拭するためのひとつの方法です。

前提として理解していただきたいのは、あなたの病状をもっともよく知るのは、あなたの担当医だということ。セカンドオピニオンで診察する医師が、そのわずかな接点で最適な治療法を見極められるとは限りません。セカンドオピニオンで提示された治療方針が、患者さんにとって現実的な選択肢ではないケースもあります。

患者さんの病状や生活を含めた多層にわたる情報を、もっとも多く持っているのは担当医です。セカンドオピニオンで異なる意見を提示された場合には、担当医に持ち帰り、その治療が自分に本当に合うのかどうかを確認してみるといいですね。

セカンドオピニオンには、治療や転院は含まれません。

回答:熊谷 靖代さん

セカンドオピニオンでは検査や治療をしてくれる、転院させてくれると勘違いしている方が、時折いらっしゃるようです。そもそもセカンドオピニオンとは、患者さんが納得のいく治療法を選択できるよう、これまでの記録をもとにして、担当医とは異なる医師が治療選択の意見を提示すること。そこを納得したうえで受けられるといいですね。

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担当医以外に誰に相談したらいいの?

相談先はいろいろ。あなたのサポーターを見つけましょう。

回答:熊谷 靖代さん

担当医以外にも、相談相手はいます。病院にもよりますが、症状や治療に関する相談なら、看護師や薬剤師、医療ソーシャルワーカー、病院のがん相談支援センター(がん相談支援室)の相談員といった医療スタッフが話を聞いてくれます。外部に相談したいなら、日本対がん協会の「がん相談ホットライン」などの電話相談もあります。

生活や気持ちに関する相談なら、病院のがん相談支援センター(がん相談支援室)のほか、患者会、がんに詳しい専門スタッフが相談に乗ってくれるサポートの場、病院に在籍する医療ソーシャルワーカーがいいですね。このように選択肢はいろいろですから、相談してピンとこなかったら別のところを試してみるとよいでしょう。

これからも、あなたが心地よく生活を続けていくために、意識して自分のサポーターを探してみてください。

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痛みを緩和する薬を服用すると、自分を保てなくなっちゃうの?

怖がらないで。
あなたがラクに過ごせるお薬が、きっとあります。

回答:清水 千佳子先生

そうですね。とはいえ、痛みがひどいままでは、気持ちが落ち込んだり、不安になったり、頭も働かなくなってしまいます。副作用を恐れるあまりに痛みを緩和するお薬を使わないことで、かえって自分自身を保てなくなってしまうかもしれません。自分自身でいられるためにも、勇気を出して服用してみてはいかがでしょうか。

鎮痛剤も種類はいろいろです。服用を始めてしばらくは、お薬の量を調節したり、どのお薬が自分に合うか、あれこれ試したりする期間があるかもしれません。また、お薬以外の方法を検討できる場合もあります。以前服用したお薬でイヤなことがあったのなら、あらかじめ担当医に伝えておくといいですね。担当医と相談しながら、あなたがもっとも心地よく過ごせる方法を見つけてください。

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