こころと会話
家族や周りの人との
向き合いかた
身近な家族や周りの人とうまく
関わるためのヒントをご紹介
家族になんて伝えよう?
少しずつ、家族に伝えていく努力をしましょう。
回答:熊谷 靖代さん
ご家族にどう伝えるか、悩みますよね。ひと言で家族といっても性格はさまざまなので、相手のタイプに合わせて伝えかたを工夫する必要があるかもしれません。たとえば、あなたの病気に理解のある相手なら、感じたままに話す。問題解決志向で根掘り葉掘り説明を求められて自分がつらくなる場合は、診察についてきてもらうのもひとつの方法です。第三者から説明を受けたほうが、すんなりと理解できることもあるからです。
ご家族が診察に同席できない場合は、担当医に書いてもらった話の要点を見せるのはいかがでしょう。紙を見せることで、ご家族にスムーズに伝えられるかもしれません。
お子さんに伝えるかどうか迷っている方は、その子の年齢と性格を踏まえて判断するといいですね。たとえば小学生高学年であっても、しっかりしている子なら受け止められることもあります。そして、お子さんに気持ちの余裕がないときは伝える時期を見合わせるほか、「具合が悪くて話を聞いてあげられなかったらごめんね」といった配慮の言葉を、折に触れてかけてあげられるといいですね。
親にも伝えるべき? なんて伝えよう?
伝えるかどうかは、その人次第。正解はありません。
回答:熊谷 靖代さん
病気について親御さんにどう話すか、難しいテーマですね。とはいえ、親御さんに頼みごとが生じる場合、病気の話をする必要があるかもしれません。そのようなケースを除けば、親御さんに伝えるかどうかは本当にその人次第。伝えても伝えなくても、どちらが正しいということはありません。
その一方で、多くのご家族を見ていて感じるのは、子どもに病気のことを打ち明けてもらえないのは、親にとってはショックだろうな…ということ。「もし自分の子どもが病気のことを話してくれなかったら、私はどう感じるだろう?」と、一度考えてみるのもいいかもしれません。
そして、伝えることを選択した場合は、相手のペースに合わせて話す、一度ですべてを話さないなど、配慮できるといいですね。
家族に心配かけたくない。家族への頼りかたがわからない
少しずつ、「頼る練習」を始めてはどうでしょう。
回答:熊谷 靖代さん
家族がこのつらさをわかってくれない
「相手がわかってくれたか」よりも「自分が言えたかどうか」。
回答:熊谷 靖代さん
がんの治療中に感じる体や心のつらさは、はっきりと目に見えるものではありません。だから、ご家族にも伝わりづらいもの。仮に言葉を尽くして伝えたとしても、理解してもらえないこともあります。
そういったことを前提にしながら、「最近体調がすぐれない」など、折々で自分の状態を伝えてみるのもいいかもしれません。どんなに身近な人であっても、「言わなくてもわかってくれる」とは限りませんから。
そして、伝える際には「相手がわかってくれたかどうか」ではなくて、「あなたが言えたかどうか」を大切にできたらいいですね。患者さんから「家族に言えたのよ」と伺うと、「言えただけで本当によかったですね」と、私はお答えしています。
家族と治療方針が一致しない。どうすればいい?
歩み寄りのポイントは、どう折り合いをつけるか。
回答:熊谷 靖代さん
まずなによりもお伝えしたいのは、あなたの意見を大切にしてほしいということです。それを踏まえながら、ご家族と歩み寄るための道すじを考えてはいかがでしょうか。ご家族はあなたにとってもっとも身近な存在ですから、相手の意見に一切耳を傾けないのは難しいですよね。
歩み寄る際に心がけたいのは、「どちらの意見が正しいのか」を競うのではなく、「どう折り合いをつけるのか」を模索する姿勢だと思います。唯一の正解があるわけではないので迷うかもしれませんが、お互いの歩み寄るポイントを探ってみてください。
以前関わりのあったある患者さんは、ご自身は治療をストップしたいのに、ご家族は治療を続けてほしいという状況で悩んでおられました。そこで、ご本人とご家族が自分の気持ちを話せる場をつくるように働きかけました。こうしたケースでは、ご家族があなたを大切に思う気持ちを汲みながら、「今の治療には前向きになれない」という素直な想いを伝えられたらいいですね。
家族がつらそうで見てられない
不眠が続くようなら、クリニックの受診をすすめてみて。
回答:熊谷 靖代さん
もしかすると、ご家族はつらい気持ちを抱え込み、出口が見えない状態にあるのかもしれませんね。もし夜眠れない状態が続くようであれば、一度かかりつけのクリニックなどに受診をすすめてはいかがでしょうか。「夜眠れているかどうか」は、受診を見極める大切なポイントです。「最近疲れているようだから、病院に行ってみれば?」と、ひと声かけるといいかもしれません。
同時に心がけたいのは、あなたが相手の感情に巻き込まれないようにすること。こちらが精神的に疲れていると、どうしても気持ちが引きずられがちになります。心の落ち着きを保ち、自分のペースで生活できるよう、あなたなりの工夫を重ねられるといいですね。
出典:
- 厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html - 日本うつ病学会治療ガイドラインより
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/160731.pdf
職場にも伝えるべき? どう伝える?
「どうしたら会社に居場所を確保できるか」という視点で、環境を整えて。
回答:キャンサー・ソリューションズ株式会社 スタッフのみなさん
職場の人には、乳がんが転移した意味は伝わりづらいなあ…。それが、私の経験からくる実感です。「これからも仕事を続けるために、いかに居場所を確保するか」という視点で考えるのがよいかもしれません。自分が中心となって、職場の人たちをどう巻き込んでいくか、いかに味方を増やすかというスタンスです。
まず、上司や人事担当者、産業医など、協力者となるキーパーソンを見つけることから始めてはいかがでしょうか。彼らに伝える際に助けとなるのは、「どうしたら会社は私を使えるか」という視点に立って、必要な材料を提供する姿勢。自分にはどんな業務ができて、どんな業務ができないのか。どんな働き方なら可能なのか。配慮してほしいことはなにか。こういった事柄を具体的に伝えてみてはいかがでしょうか。
また転移乳がんの場合、お薬など治療内容が変化するかもしれません。それによって体調も変わることがあるので、自分の状態に変化があるときは、こまめに報告できたらいいですね。
もうひとつ、仕事に関する相談窓口は、外部にもたくさんあります( 各種相談窓口)。気持ちが煮詰まらないようにこれらを活用するほか、周りの患者仲間に気持ちを聞いてもらう人も多いようです。今まで通りの生活を続けることは、気持ちの面でも大切なこと。これからも仕事を続けたい方は、大変なことかと思いますが、どうか諦めずに環境を整えてみてください。
★ 各種相談窓口はこちら
- がん相談支援センター(がん相談支援室)
https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/fTopSoudan - 就労相談(社労士がん相談)
https://www.gsclub.jp/work-support - 就労セカンドオピニオン ~電話で相談・ほっとコール~
https://workingsurvivors.org/secondopinion.html
本人にどう声をかけたらいいのかわからない
「あなたはひとりではないよ」と、
態度や行動で示せたらいいですね。
回答:キャンサー・ソリューションズ株式会社
スタッフのみなさん
本人にどう声をかけたらいいのかわからない…。転移乳がんの診断直後は、そんなご家族の声をよく耳にします。家族のみなさんもご本人同様、どうしたらよいかわからず感情が大きく揺らぎますよね。落ち込んでいる本人を励まそうとしたり、普段通りに接しようと努力したり、家族も戸惑ってしまうと思います。それも自然な心の動きなので、家族は「第二の患者」と呼ばれています。
もしご本人が話を聞いてもらうことを望んでいるようなら、アドバイスを挟むことなく、話を聞いてあげるといいのではないでしょうか。そのほか、好きなお茶を一緒に楽しむ、「話したいときはいつでも聞くよ」と声をかけるなどして、ご本人はひとりではないことを態度や行動で示す方法もありますね。
サポートの仕方がわからないときは、「なにかできることはある?」と直接聞いてみるのもひとつ。そんなふうに気遣ってもらえたら、きっとご本人もうれしいと思います。
最後にもうふたつ。ご本人に伝えなくても構わないから、体調や生活の細かな変化を観察すること。ときどき診察に同行し、担当医に会う機会を持つこと。これらも、ご家族の関わりとして大切なポイントかもしれません。
つらい気持ちをひとりで抱え込んでしまってしんどい…
我慢しないで。息抜きすることが、
みんなのためになります。
回答:キャンサー・ソリューションズ株式会社
スタッフのみなさん
本人のサポートと自分の仕事、折り合いがつけられない
抱え込まない。完璧を目指さない。あなたの負担を軽くして。
回答:キャンサー・ソリューションズ株式会社 スタッフのみなさん
こういった悩み、患者さんの家族からよく伺います。みなさん、「自分がなんとかしなきゃ」とがんばっておられるんですよね。最初にお伝えしたいのは、「ひとりで抱え込まないで」ということ。ほかの家族や親戚、友人など、周りにサポーターを増やすことは、患者さんとの暮らしを続けるうえでとても重要だと思います。
次にお伝えしたいのは、「100%を目指さないで」ということ。ひとりであらゆることを完璧にこなそうとせず、あなたにとっての「いい加減」を見つけてはいかがでしょうか。在宅で介護をするご家族の負担軽減を目的とした短期入院、「レスパイト入院」を活用する人もいるようです。
もうひとつ、会社勤めの方は、今後に備えて職場に相談しておくといいかもしれません。介護休業や残業制限など便利な制度があると思うので、上手に活用して、あなた自身の負担も軽くなるよう環境を整えられるといいですね。